日本の防災にもつながるタイの防災

(文:太田祥歌)

災害は時に国家という枠を超えより広い地域に被害を及ぼします。イメージしやすいのが津波です。例えば1960年に日本の裏側のチリで発生した津波が、約1700キロの距離を伝わって到達し、宮城県の南三陸町では41名の方が犠牲になりました。

しかし、こうした離れた場所で被害を及ぼすのは、津波だけではありません。例えばある場所を襲った台風や洪水という災害が、他の国にも間接的に被害を及ぼすということが考えられます。

今回は、日本とタイの例を紹介します。タイには日本企業の多くの工場が進出しています。タイ商務省によると、2014年までに累計で8890社の日本企業が登録されているそうです。多くの日本企業がタイへ進出するのは、タイが東南アジアの物流において中心的な位置を占めていること。親日家が多く、日本食を始めとする日本文化が浸透しているため、日本人にとっても生活がしやすいということが理由です。

2011年、タイでは大規模な洪水が発生しました。数ヶ月にわたって続いたこの洪水は、日本の四国とほぼ同じ面積に浸水を引き起こし、815名に上る死者を出しました。同年10月には日系企業が多数進出するアユタヤなどの工業団地にも浸水被害をもたらし、日本の自動車メーカーやカメラメーカーの物流に深刻な影響を与え、日本国内でも大々的に報道されました。

この洪水のため、2011年のタイ経済は低迷しました。しかし、翌年には回復に転じ、あるコンサルティング会社の調査によると、8割を超える日本企業がそのままタイで操業することを選択しています。そうした企業は、洪水被害の後、床の嵩上げや機械を2階へ移すといった防災対策を講じたそうです。一部企業では、タイ国内のより安全なところに工場を移転し、また、ある企業は工場の一部を海外に移転していますが、洪水を理由にタイからの撤退を決めた企業はなかったそうです。

実は、タイでは洪水は毎年のように起きています。2011年の洪水のように被害が大規模になることは、珍しく、人的要因による被害拡大も指摘されています。しかし、ここで重要なことは、台風や洪水のリスクというのは、その大きさに関わらず、タイとは切り離せない災害だということです。そのため、タイがこうした災害に強く、迅速に立ち直れる国になるよう支援することが、日本の経済や物流という側面における防災にもつながっていきます。